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大型の台風が過ぎ去った晴天の日に、フードディレクターのさわのめぐみさんは宮古島に降り立った。ケータリングを中心に「ものがたり食堂」というイベントを開催している彼女が、今回は旅先で出会った食材や料理をインスピレーションに現地にて料理を試作する。それがこの旅の終着点だ。
さっそく、『あたらす市場』や『ワイドー市場』などの産直に足を伸ばすことに。
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「ひどい台風だったので、現地の人は野菜の収穫量や種類が少ないといっていましたけど、どれも嵐を乗り切った力強い野菜や果物が並んでいました。キーツマンゴーの甘い香りが沸き立つ市場で、東京では見かけない果物を見て回り、人間の顔以上の細長いスイカや冬瓜にはついつい騒いでしましたね。収穫物から太陽のエネルギーそのものを感じ取ることができたんです」
あたらす市場
沖縄県宮古島市平良西里1440-1
営業時間/9:00 - 19:00
電話/0980-72-2972
ワイドー市場
沖縄県宮古島市平良字松原551-4
営業時間/8:30 - 19:00
電話/0980-72-7684
さんぽで楽しむ南国の野草摘み体験
食材の入手方法は、市場で購入するだけに留まらない。
続いては、南国の野草摘みへ。宮古島を知り尽くす達人に連れられ、さんぽのペースで様々なプログラムを推奨する『ひとときさんぽ』によるアレンジで、地元のおばあに案内されながら伊良部島の草原や砂浜を歩いた。
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「初めてこれを食べようと思った人はいったい何がきっかけだったんでしょうね? (笑)」と、首をかしげながら緑色のハート型の葉っぱを砂浜で摘み、バナナ畑では、1週間前にカットされた幹からすでに20センチほどの新しい新芽出ていることに圧倒された。
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「南の島の植物は厳しい自然の気候に身を委ね、こうして生命の循環を繰り返しているんだなと感動しました。こうした収穫体験の魅力ってシンプルで、まずは食材をよく知れることだと思うんです。今回初めてドラゴンフルーツが幹になっている姿を見て、緑色のゴツゴツしたサボテンのような幹が龍のように石垣に絡みつき、実がなっていた。なるほど、確かにドラゴンだ! と」
こうした収穫の経験が、当たり前の”食べる行為”をより豊かにしてくれるのだ。
ひとときさんぽ ツアーデスク
株式会社プラネットフォー
電話/0980-73-7311
http://www.plannet4.co.jp/hitotokisampo/
収穫を楽しんだ後は、おばあの自宅に招かれ、食材の特性や調理方法を習うことに。おばあたちと肩を並べて台所に立ち、地元の味付けでたくさんの料理を振舞われた。
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たくさん食べて、たくさん遊ぶ。旅の醍醐味そのままに、人生で初めてシュノーケリングを体験し、沖縄本島の民芸やちむんを物色したり、現地の料理もできるだけ味わい尽くした。なかでも『RICCO』のジェラートはお気に入りで、マンゴー、パッションフルーツ、紫芋、バナナから、牛乳、黒あずき、泡盛、ハーブにちんすこうや豆乳など宮古島でとれる素材をいかした全60種以上だ。
RICCO
沖縄県宮古島市平良西里244
営業時間:10:30~19:00(冬季変動あり)
電話/0980-73-8513
そして1日のエンディングは、夕景の砂浜。ただただ黙って見ていたい美しい夕日は、1分1秒ごとに移り変わり、静かにその日の終わりを告げる。
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食卓を囲んだ“食べるものがたり”
「旅を締めくくるクッキングタイム。買ってきた食材を並べて、買ってきた食材の色と、お皿の色のバランスを見ながらレシピを考えた。
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出来上がったのは、紫芋を使ったお餅入り団子やドランゴンフルーツのヨーグルトソース、パパイヤとレンブのサラダ、ゆし豆腐を使った和え物など。そして、料理の横に添えるのは、地元産のサトウキビからできたラム酒「蒼の空」、スターフルーツ、ミント、アセロラ、ジンジャーを入れた自家製モヒートだ。
「今回の旅の行程が一つの”ものがたり”となってお料理に表現できた」とさわのさん。調理し、食卓に並べる過程で、旅の情景が蘇ってきたのだそうだ。
SAWANO’S EYES
「島のおばあが神聖な御嶽(うたき)について説明してくれた。宮古島は、沖縄で最も御嶽の多い島。必ず敷地内には神が宿る木・クバの木が育っていて。立ち入り禁止の看板はないけれど、この場所に男性は入ってはならないし、女性も神事のお役目を受けた人だけ。土地特有の風習を知り、その聖地を私たち観光客も尊重し、ルールを守りながら旅する。旅のエチケットだね」